熊をなぜ駆除しないのか?その理由と対策

近年、人里に熊が降りてきたというニュースを多く耳にします。「危ないから全て駆除すれば良いじゃないか」という声もよく耳にしますが、そうはいかない理由があります。

今回は、熊を駆除しない理由と、駆除以外の対策について紹介しますので、ぜひ理解を深めていただけると幸いです。

熊を駆除しない理由は?

熊を駆除しない大きな理由は、自然界の生態系に影響を与えるからです。

生態系における熊の役割

熊は、植物や動物(シカ、サケ、マスなど)を捕食する消費者としての役割を担っています。高次消費者と呼ばれる生態系の頂点であり、生態系のバランスを取っている大きな要因の一つです。

また、熊の糞には食べた果実の種が含まれるため、種子繁栄に繋がります。また、植物が育つための肥料にもなり、自然を豊かにする役割も担っているのです。

熊の絶滅危機と保護活動の必要性

特にヒグマは、国内では北海道にのみ生息する貴重な種族です。令和2年には一部地域のヒグマが絶滅のおそれのある地域個体群として選定されている状況もありました。

これらの背景から、単に駆除すれば良いというわけではなく、バランスを取ることが重要です。北海道では「ヒグマ管理計画」という計画を立案し、ヒグマに対しての施策を行っているほどです。

熊を駆除することによる影響は?

熊の駆除は、良い影響を与える場合もあります。例えば、秋田県での事例を見てみましょう。

過去に子グマが現れた時に、観光客が「子グマがかわいい、写真を撮りたい」と近付こうとし地域の男性が引き留めたことがありました。

子グマの近くには母グマがいる可能性があり、子グマを守ろうと攻撃してくることが多々あります。そうなると、観光客に被害が出て、たとえ観光客側に非があったとしても他の地域からは「熊が出た危ない観光地域」として見られてしまい、客足が遠のきます。

熊を駆除することで、こういった被害を未然に防ぐことができ、観光業の妨げにならない、というメリットはあります。

しかし、先述した通り熊を全て駆除すればいい、といったシンプルな話ではありません。人に悪影響を与えないよう、バランスを取っていくことが重要です。

地域ごとのバランスを取った事例については、後ほど紹介します。

熊を駆除する以外の熊対策ってある?

ここでは、熊を駆除する以外の熊対策を紹介します。

熊との共存を目指す対策と成功例

2023年に北海道旭川市で、子グマを保護した事例があります。旭川市には旭山動物園という大きな動物園があり、ちょうどヒグマ館が新しく立ち上がった時期でした。

母グマと離れてしまい、衰弱した子グマを一旦保護、その後動物園内で世話をすることになったという事例です。

しかし、こういった保護は収容スペースに空きがあり、熊が攻撃的な個体でないことが条件です。残念ながら、全ての熊を保護する余裕はありません。

電気柵などの設置・地域対策など

自然の山と民家が近い地域などでは、電気柵などの設置も行われています。人里に降りてきた熊に対し、電気が流れる柵で防御し近付けないようにするといったものです。

北海道札幌市には、熊と人間の住む地域を分けるため、電気柵を設けるとともに草刈りや緑地の整備を行い、緩衝エリアを設ける取り組みがあります。

これは、ヒグマの食べ物になる果樹を伐採することや、河川敷のヤブを刈り取ることでヒグマの通り道を経つことを目的に行っています。

上記のように、地域での熊対策を行う地域も珍しくありません。

まとめ

熊は生態系に大きな影響を与える種族です。そのため、個体数の管理は慎重に行わなければなりません。

熊を駆除することで良い影響もありますが、重要なのはバランスです。単に駆除するだけでなく、共存するために保護や電気柵、緩衝エリアの整備などで対策を行うことも重要です。

ただし、熊が人間にとって危険な存在であることに変わりはありません。万が一遭遇した時には、正しい知識が必要です。熊への対処法は以下の記事でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。

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