本記事では、薬室について解説すると共に、狩猟で銃を持ちたいと思った際に使える情報を掲載しています。
また、既に使用されている方向けにメンテナンスについても解説しておりますので、狩猟に興味をお持ちの方、既に行っている方ともに参考にしていただければ幸いです。
猟銃における薬室とは?
薬室とは、発射前の弾(実包又は空砲)が入る銃の部位です。発射まで弾を固定しておくだけでなく、発射後に弾を銃の外に出す(排莢)役割もあります。
銃の種類により異なりますが、弾倉がついているものの多くは排莢後すぐに次弾を装填できる仕組みです。余談ですが、この装填動作によってレバーアクション、ボルトアクション、セミオートなど名称が異なります(動作の仕組みが異なるため)。
チャンバー(チェンバー)と呼ばれることもあり、薬室に弾が入っているかの確認をチャンバーチェックと言います。
薬室の種類
薬室には銃ごとに種類が異なります。日本の狩猟には使えないものもありますが、銃の雑学として見ていきましょう。
回転式拳銃の薬室
最も信頼性がある仕組みの一つである回転式拳銃(リボルバー)。リボルバーは薬室が5〜6個円状に配置されており、一つひとつに弾を込めて発射します。
古いものは前方から火薬と弾頭、後方に雷管をつけるものもありましたが、近年ではライフルなどと同様に一体型の弾の装填が一般的です。
自動式拳銃の薬室
自動式拳銃の薬室は、リボルバーと異なり一つの薬室です。弾を発射後すぐに排莢、次弾装填といった流れで発射します。
リボルバーと異なり、動作がやや複雑になるため排莢や次弾装填不良を起こすこともあります。しかし、装填の手間の少なさや使いやすさから軍隊などでは自動式拳銃が採用されることが多いです。
ライフルの薬室
ライフルは動作の種類が多く、それぞれ形状が異なります。例えば、レバーアクションではレバーを下げた時に薬室から排莢され、ボルトアクションではボルトを引いた時に排莢される仕組みになっています。
また、セミオートのものは発射時のガス圧や反動を利用して、遊底を後退させる仕組みになっており、装弾の爆発圧力や肩付け、銃のメンテナンス状況で排莢・次弾装填に変化がでる場合があります。
薬室のメンテナンス方法
ここでは、薬室のメンテナンス方法について解説します。
定期的な清掃の重要性
詳しくは「薬室のトラブルと対処法」で解説しますが、薬室のメンテナンス不足は排莢不良など、銃のトラブルに繋がります。
特に熊など危険な獲物を目の前にして銃のトラブルが発生した際、命に関わりますので、日常のメンテナンスは非常に重要です。
また、メンテナンスを行うことで銃の異常にも気付きやすくなります。暴発や変形などを未然に防止できるため、定期的にメンテナンスを行いましょう。
薬室クリーニングの手順
- 銃を分解する
- 薬室内の汚れを落とす
- 銃を結合する
- 空撃ち点検
- ケースに戻す
散弾銃・ライフル銃それぞれのメンテナンス方法は以下の記事で紹介しています。全体的なメンテナンスを行う際の参考にしてください。
必要なクリーニングツール
薬室のみのメンテナンスでは、以下のツールを使用します。
- スプレーオイル(WD-40など。液体のオイルでも可)
- ウエス
- チャンバーブラシ
- 手袋
さらに、銃身内のメンテナンスを行う場合は追加で以下のものを用意しましょう。
- 洗い矢
- ロッドガイド
- 銅orナイロンラシ・アダプター
薬室のトラブルと対処法
薬室の手入れを怠ると、トラブルが発生します。共通する対処法としては、日常の手入れを行い、異常があればすぐ修理に出すことです。
弾薬の詰まり
薬室の整備不足は、弾薬の詰まり(ジャム)を引き起こします。これは、薬室内に汚れが溜まることで動作が鈍くなり、排莢動作が上手くいかないために起こるケースが多いです。
異物の混入
猟場で薬室を開いた状態で行動してしまうと、土など異物が混入するケースがあります。異物が混入した状態で射撃をしてしまうと、薬室の変形などを招きますのでご注意ください。
また、薬室だけでなく銃口に雪や泥が詰まった状態で射撃しても、銃身が変形する可能性があります。メンテナンス時はもちろん、射撃前には異物が混入していないかチェックしてから射撃しましょう。
摩耗や損傷の確認方法
薬室内の摩耗や損傷は、目で見るだけでなく触って確認します。散弾銃の12番でしたら直径も大きいので触って点検できますが、ライフル銃は触って点検が難しいものが大半です。指先や爪の先で触れた際、本来なかった部分に引っ掛かりができているなら、薬室が膨らんでいる可能性があります。
銃の部品は消耗品ですので、一生使い続けられることはほぼありません。摩耗していくことを前提に、メンテナンス時に見て、触ってチェックしましょう。
※薬室が膨らんでしまった場合は、基本修理不可能です。ライフル銃でかなり太い銃身の場合はリチャンバリング(薬室の彫りなおし)も可能ですが、散弾銃はそれはできません。薬室が膨らむ原因は自作した装弾に起因することがほとんどです。下記でご説明します。
薬室が膨らむ(損傷)する原因
膨らむ原因のほぼ100%に近い原因が自作装弾(ハンドロード)によるものです。薬莢の亀裂や痛みに気が付かず再リロードし、発砲すると亀裂より高圧高温の発射ガスが漏れます。ほとんど亀裂の入る部位は薬莢の側面(薬室の壁に触れる部分)ですので、亀裂部位に直接ピンポイントで高温高圧ガスが薬室の壁に吹き付けられる訳ですから薬室がガスの影響で損傷(膨らむ)します。一度膨らんだ薬室は元に戻りませんので、その膨らんだ部位が引っ掛かりになり抵抗が増し排莢不良を引き起こします。修理としては上記の施工が必要になりますが、どのライフル銃にも当てはめれるものではありません。極端に細い銃身ですと無理な場合がありますのでその場合は銃身交換となります。(銃身交換作業が可能なのは手動式のライフル銃に限ります。自動式ライフル銃は銃身交換不可ですので、銃自体の入れ替えとなります。)
購入時に知っておきたい薬室のポイント
ここでは、購入時に知っておきたい薬室のポイントを解説します。
品質と信頼性のチェック
大手のメーカーであれば、薬室が粗雑な作りになっていることはほぼありません。日本国内の銃砲店で販売されている銃のほとんどは問題なく使用できます。
ただし、ほぼ鑑賞目的で販売されているようなアンティーク銃などは、経年劣化により摩耗している可能性もあります。古い銃をお求めの場合は、実際に射撃できる状態なのかを必ず銃砲店にご確認ください。
銃の種類別の特徴
銃の種類によって、薬室の形状は異なります。例えば、散弾銃と、ライフル銃の薬室は別物です。
薬室の大きさによって、入る弾のサイズも異なりますので、購入しようとしている銃の適合実包(弾)と、動作方式、薬室長を併せて確認しておきましょう。
購入後のサポートと保証
メーカーによっては、購入後の保証期間が用意されているものもあります。一般的な家電製品などと同様に修理が受けられるものもありますので、購入時には保証の有無も確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、薬室についてよくある質問にお答えします。
自分でメンテナンスをする際の注意点は?
自分で薬室をメンテナンスする際、いくつかの注意点があります。
まずは、異物の混入や破損がないかをチェックすること。亀裂が入っていたり、動作が鈍い場合は修理に出す必要があります。※損傷具合では修理不可の場合もあります。
次に、油を塗りすぎないこと。薬室に油を塗りすぎると固着してしまい、排莢不良の原因になります。もちろん、錆止めのために塗布は必要ですが、塗った後は軽くウエスで拭き取るようにしましょう。
薬室の交換はどのくらいの頻度で必要ですか?
基本的に薬室の「交換」作業はできません。現物修理となります。きちんとメンテナンスや異常のない装弾を使用している場合はそう簡単に破損する場所ではありません。修理となった場合はその銃の銃身の太さや形式(手動式に限る)、長さが関係してきます。ライフル銃の場合は修理できる可能性も秘めていますが、散弾銃の場合はほぼ銃の入れ替えとなりそうです。
まとめ
薬室は弾を装填する箇所で、発射までの弾を保持するだけでなく、排莢する役割を持ちます。銃の種類や動作方式により細部の形状は異なりますが、基本的にリボルバー以外は同様の役割を担っています。
メンテナンスについては、動作不良を未然に防ぎ、故障などの発見にも繋がるため定期的に行いましょう。特に異物の混入や油のつけすぎ、摩耗状況にご注意ください。
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